“Schlachtplatte”とは…
Schlachtplatte(シュラハトプラッテ)。シュラハトプラッテというのは、ドイツ家庭でもよく食べられる代表的なドイツ料理の一つである。最近では日本でも比較的名前が知られるようになってきたように思う。
塩漬けした豚肉と、塩漬けしたキャベツ(ザワークラウト)、ヴルストと共に蒸し煮にした料理で、肉類の付け合わせとして用いられる食材の代表格はザワークラウト(当然ながら)とパン、ジャガイモである。
ドイツでは豚肉とともに新鮮なブルートヴルストとレバーヴルスト(frischer Blut- und Leberwurst)を使うのが一般的であるが、日本で”シュラハトプラッテ”の名前で紹介されているものには ほとんどの場合これらのヴルストは使われていない。
原因としてはおそらく、ブルートヴルストとレバーヴルストなどの臓物系のヴルストが日本人の舌に馴染みがないことが一つ。そして、もう一つの原因としては この料理が間違った認識とともに日本に広まってしまっているということが考えられる。
しかし、実のところ これらのヴルストはシュラハトプラッテという料理の必須構成食材といっても過言ではなく、これらが入っていないものははっきり言ってしまえば 本来のSchlachtplatteとは似て非なるもの…いやそれどころか 全くの別物なのである。
“シュラハトプラッテ”vs.”シュークルート・ガルニ”
ちなみに、フランスのアルザス料理にも類似の料理が存在し、そちらは”シュークルート・ガルニ(choucroute garni)”と呼ばれる。この地域はドイツと隣接するため、食文化にもところどころ重りがみられる。ちなみにシュークルート(仏語)=ザワークラウト(独語)である。
このシュークルート・ガルニが日本ではシュラハトプラッテと同一視されることがよくあるようである。アルザスという地域の特性と、どちらの料理もザワークラウトを使っているという共通点に起因する混同なのだろうと思うが、これらは全くの別物である(起源は同じかもしれないが)。
ちなみに、シュークルート・ガルニも伝統的なレシピではクラックやモンペリアル・ソーセージなどある程度決まった種類のソーセージを使うとさるているはず。どの国でも伝統的に食べられているものには、それ相応の歴史と背景が存在するのである。
**非常に残念なことに、一度日本語で”シュラハトプラッテ”と検索すればすぐにわかることだが、料理研究家を名乗る方々すら、シュラハトプラッテとシュークルート・ガルニは同じようなもの、ザワークラウトとソーセージを煮込めばいいだけ、といった事を臆面もなく書いている。(“研究家”を名乗るならせめてきちんと調査はしてほしいと思ってしまうのだが…。最低限その国の言葉で検索するだけでも、今時はある程度の間違いには気づくことができる)
ちなみに、日本のオクトーバー・フェスなどで見かける”シュラハトプラッテもどき”は、むしろ上述のシュークルート・ガルニに近いものに思われるが、あくまでシュラハトプラッテとして(シュークルート・ガルニではなく)日本で紹介されているのは「ソーセージ、じゃがいも、ザワークラフトといえばドイツ」という日本人の潜在的な認識によるものなのだろうか…。
“ブルートヴルスト”と”ジュニパーベリー”
ブルートヴルストというのは、イギリスのブラックプディング、フランスのブータン・ノワール同様に豚の血液を混ぜ込んだヴルストのこと(ちなみにレバーヴルストというのは、名称そのままレバーを使ったヴルスト)である。
実は相当に長い歴史を持つ食品なのだが、日本では一般的ではないので食べたことがない人も多いだろう。材料として血液が使われていることに加え、その独特な味と風味に 好みの分かれるところかもしれない。
そして、もう一つ忘れてはいけない食材がジュニパーベリー。これはジンの香りづけにも使われる香辛料で、胡椒とベリーが合わさったようなかなり強めの味と風味を持ち、ザワークラウトとも相性が良いことから煮込み料理によく使用される。そして、ブルートヴルストの独特な風味とも非常に相性が良い。こちらはGABANなどが商品として取り扱っているので、大型商店などでは比較的容易に手にはいる。
では、一通り書きたいことを書いたところで、”Schlachtplatte”の本格レシピを紹介しよう。
“Schlachtplatte”の本格レシピ
Schlachtplatte : シュラハトプラッテ
Equipment
- 燻製網 *燻製しないでも作れるので任意
- 蓋つき鍋
Ingredients
- 400 g 豚塊肉 カッセラー(塩漬け豚肉を燻製したもの)
- 2 本 ブルートヴルスト
- 1 本 レバーヴルスト
- 1 塊 ベーコン
- 4 個 じゃがいも
- 1.5 個 玉葱
- 10~15 粒 ジュニパーベリー
- 5~6 個 クローブ
- 適量 フェンネル
- 適量 塩
- 200 ml 白ワイン
- 適量 ラード
Instructions
簡易カッセラー作り
- 豚かたまり肉は5~7日前から、ジップロックなどの袋に3%程度の食塩水とともに入れて、冷蔵庫に寝かせ塩漬けにしておく(塩漬け豚肉作り)。この際、血合いなどが臭みの原因になるので、かたまり肉はしっかり洗って血合いなどを除いておく。
- 豚かたまり肉は表面の水分をしっかりと取り(できれば数時間ほど干しておく)、簡易燻製器で燻製(熱燻で良い)する。表面に水分が残っているとえぐみや苦味の原因になるので注意。*燻製器がない場合は、この工程は省いても良い。
- 15~20分ほど燻したらカッセラー(簡易版)は完成。後ほどしっかりと煮込むのでこの段階で中まで完全に火を入れる必要はない。
本調理
- 玉ねぎは薄切りにする。ザワークラウトは水気を切った上で 適当にザクザクと包丁を入れておく。ザワークラウトの酸味が強すぎる場合は、何度か水ですすいでから使うと良い。
- 鍋にラードを敷き、玉ねぎを甘みが出るまでじっくりと炒める。十分に炒めたらザワークラウトを加えてさらに炒める。
- 鍋に白ワイン200mlと水を玉ねぎとザワークラウトがひたひたに浸かる程度まで注ぐ。調理中に足りなくなれば適宜ワインあるいは水を足す。一度 煮立たせてアルコールを飛ばす。
- 一度火を弱め、クローブ、フェンネル、ジュニパーベリーを加えたのち、全体に軽く攪拌する。
- 煮汁がふつふつと煮立ってきたら、塊ベーコンとカッセラー(あるいは塩漬け肉)をいれ、鍋の下のザワークラウトを掘り返し(?)肉類が見えなくなるまでしっかりと覆い被せる。さらに鍋の蓋もして、そのまま30~40分ほど蒸し煮にして肉にしっかりと火を通していく。
- 肉(特にベーコン)が程よく柔らかくなれば、次にじゃがいもを加える。じゃがいもは煮崩れするため 肉類と同時に鍋に入れると早すぎるので注意。
- じゃがいもに串が通るくらいになれば、最後の仕上げにヴルストを加える。あまり長くにすぎるとブルストがはちけるので、5~10分 温める程度にとどめる。味を見て万が一 足りないようなら、塩と胡椒で調味する。
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