Janssons frestelseとは…
Janssons frestelseはスウェーデンの代表的な伝統料理であり、クリスマスのご馳走などにも並ぶ見た目にもなかなかに豪華な一品である。基本的には食材を重ねてオーブンで焼くだけのシンプルな料理だということもあり、スウェーデン家庭では広く愛されている。
この料理は”ヤンソン(Janssons)の誘惑(frestelse)”と訳される。じゃがいもとクリームをたっぷりと使った北欧らしさとリッチでインパクトのある日本人受けする味わいに加え、この印象的な名前も相まってか 日本でも比較的知名度の高いスウェーデン料理である。この料理の名前の由来にはいくつかあるのだが、実際はどれも決定打に欠け、いまだに議論は終着を見ていない。
言わば じゃがいものグラタンだが、使う具材は、じゃがいも、玉ねぎ、アンチョビの三種で、ソースはホワイトソースなどではなくシンプルに生クリームだけ。上記の通り、調理自体もシンプルで、フライパンすら使わず、まな板とオーブンさえあれば作れる料理である。しかし、コツを押さえないと失敗することもあるので注意が必要(調理のコツなどはレシピで詳しく説明する)である。

ところで、この料理ではアンチョビを使用するが、スウェーデンのアンチョビは日本で手に入るイタリア式の塩漬けアンチョビとは異なり、ハーブが効いた甘酸っぱいものである。スウェーデンアンチョビは輸入規制で日本では手に入らないようだが、個人的には日本人の舌にはイタリア アンチョビを使ったものの方が合うのではないかと思う。
ちなみに、オリジナルのレシピにはアンチョビを入れないバリエーションも存在するが、その場合は”Janssons-kryddorna”と呼ばれる特別なスパイス(マスタード、ローリエ、オールスパイス、クローブ、生姜)を使うらしい。これらのスパイスを使うことでイタリア アンチョビを使用した場合も、ある程度 現地の味に近づけることもできるので、興味がある方は試されたし(詳細はレシピ部分で)。
日本ではオーブンに入れる前にチーズをかけるレシピもたまに見かけるが、現地では基本的にはチーズをかけることはない。
Janssons frestelseの由来は??
スウェーデン内でよく聞く説は19世紀のオペラ歌手で美食家のPer Adolf “Pelle” Janzonの名前に由来するというもの。真偽のほどは定かではないが、彼は類似の材料を使うAnsjovislådaにインスパイアを受けてこの料理を作るに至ったという。ただし年代に齟齬があるようであることからこの説も完全に受け入れられているわけではない。ちなみにこのPer Adolf “Pelle” Janzonは”Toast Pelle Janzon(生肉と生卵を使った料理)”の名の由来にもなっていると言われている。

他には、1923年に制作されたスウェーデン映画”Janssons frestelse”に由来する説や、1867-1869年のスウェーデン飢饉の際にDunkers parish に住むJansson家の奥さんが作ったという説などがある。
ちなみに、日本ではほとんどの場合”菜食主義の宗教家のヤンソン氏(Erik Janssonとされる)があまりの美味しそうな見た目と香りに抗えずつい口にしてしまった”というような由来で紹介されているようだが、実はスウェーデンではこの説を聞くことはない。そもそもこの説がどのようにして生まれたのかはわからないが、この料理にはいくつかバリエーションもあり、アンチョビを入れないものもあるので、菜食主義者ならそれを食べるのではないか(ヴィーガンなら話は別だが)とも思ったりするので、個人的にはあまり信じてはいない。
Janssons frestelseの本格レシピ

Janssons frestelse(ヤンソンの誘惑)
Ingredients
- 1 kg じゃがいも
- 2 個 玉ねぎ
- 200 g スウェーデン アンチョビ *つけ汁も含めた重量。*通常のアンチョビを使う場合はフィレ20枚ほどで代用。この場合は砂糖、ワインヴィネガーを各目安量は大さじ2ずつ程度とオールスパイス&ローリエ大さじ1程度加えても良い。
- 400 ml 生クリーム
- 適量 パン粉
- 適量 バター 耐熱容器に塗るための分
- 10 g バター 仕上げ用
Instructions
下準備 : 材料の下処理
- じゃがいもは全て洗って、皮を剥いておく。
- その後じゃがいもは細めの千切りにする。千切りにした後に水にさらすことはしない。水に晒すと 澱粉質が流れ落ちてしまい、出来上がりのクリーミーさと美味しさが損なわれてしまう。
- 耐熱容器の内側全面にバターを塗る。バターは常温に出しておくと、柔らかくなって塗りやすくなる。使用する耐熱容器は大き過ぎないもの、材料全てがぴったり入るようなサイズのものを選ぶ。*容器のサイズ選びは調理上で重要になる。
- 千切りにしたじゃがいもを耐熱容器に入れる。
- 玉ねぎは薄切りにする。生のままオーブンで焼くことで火を入れるので、できる限り薄く切る。
- 玉ねぎも同様に耐熱容器に入れる。とりあえず、この段階ではじゃがいもの上に乗せて置ければ良い。
- アンチョビの準備をする。アンチョビはフィレだけでなくつけ汁も使用するので、捨てないように。*イタリア アンチョビを使う場合は、スウェーデンアンチョビと同量を使ってしまうと塩辛くなり過ぎてしまうので、フィレ15~20枚程度を使用する。
- アンチョビのフィレのみを玉ねぎの上に乗せて、全体に混ぜる。この際、お箸などでなく手を使って満遍なくしっかりと混ぜ合わせる。
- 生クリームを全体に満遍なく注ぐ。生クリームの量は400mlと書いたが、具材が浸っていないと火が通り切らず半生に仕上がることもあるので、最低7~8割 程度浸るくらいは欲しい。*このため、上記の通り容器の大きさが重要になる。生クリームだけで足りなければミルクでかさを増すと良い。
- さらにアンチョビの漬け汁も満遍なく注ぐ。イタリアン アンチョビを使用する際は、好みで砂糖、ワインヴィネガーを各大さじ2ずつとオールスパイス、ローリエ大さじ1を加えると良い。
- オーブンに入れる前に表面にパン粉を散らし、その上からバター10gほどを何個かに細かく切りわけたものを散らす。
本調理 : オーブンで焼き上げる
- 200度に予熱したオーブンでしっかりと1時間以上焼く。
- こちらが焼いている間の状況。生クリームがしっかりと沸騰していることが重要。
- 表面に色良く焼き色が付いたら完成。火の通りが心配ならじゃがいもを数本食べてみて確かめると良い。
盛り付け
- 各自のお皿に取り分けて召し上がれ。
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